NHK「所さん!大変ですよ」という番組(7/15放送)に取り上げられた、既に廃業されたお風呂屋さんのエピソードのお話です。
ご依頼主は、お子様、と言っても私と近い世代の方。 ご両親がずっと営んでこられ、お父様が亡くなった後もお母様が守り続けて60年以上経つ古い銭湯。 地元の方々には、生活の一部、なくてはならない場所でした。
しかし、銭湯の経営は全国どこも大変厳しいものがあります。このお風呂屋さんも、お母様がお年を召されて継続が厳しくなり廃棄を決められました。 そこで,息子さんがお母様のために、このお風呂屋さんをミニチュアドールハウスで再現してサプライズプレゼントしたいと思いつかれたのでした。
コロナさんの影響でテレワークが広まり、そのおかげでzoomの様なコミュニケーションツールが一般的になったのは、こういう仕事においてもありがたいものです。 お顔を合わせて、いろいろな思い出のエピソードやご依頼にあたっての思いなど伺うと、どんな作品にするかのイメージがどんどん湧いてきます。 お客様にとっても良いことじゃないかと思うんですよね。 大切な思い出を託す相手がどんな人間なのか、本当に任せて大丈夫なのか不安な方は多いと思います。でも顔を合わせれば、いろいろ見えてきますものね。 今回のご依頼主様は、ご両親のお風呂屋さんを守る背中をずっと見て来られたからか、zoomでの打合せだけでなく本当にたくさんご協力くださいました。 制作途中で確認したいことがあってご相談すると、追加の写真を探して送って下さったり貴重なご意見を下さったり。 思い出を残すミニチュア制作というのは、お客様との二人三脚で進めるお仕事なんだなと、あらためて気づくきっかけになりました。
ミニチュアドールハウスの制作依頼は、ご予算を用意して資料や写真を探して、私からの質問や聞き取りにも対応して、、、 たくさんエネルギーを注いで頂くことになります。 だからこそ、完成して手元に届いた時、 「建物は残せなくて辛かったけど、こうやってミニチュアに残せて、精一杯やれることはやったよね。もう十分がんばったよね。」 と、気持ちに区切りが付けられる。 残せなかったご自身を許してあげられる。 そんな効果があるんじゃないのかな? そんなことを考えることができたご依頼でした。