喫茶「ハロー」の物語
2024年。神戸の街で長年、人々に愛され、香ばしいコーヒーの香りを漂わせてきた一つの喫茶店が、その歴史に幕を下ろしました。
お店の名前は、喫茶「ハロー」。
常連客の笑い声、カップが触れ合う音、そしてオーナーであるおじい様が守り続けてきた穏やかな時間。
そのすべてが「閉店」という言葉とともに、思い出の彼方へ消え去ろうとしていました。
突然の別れ、そして孫から祖父への「恩返し」
ある日、私のもとに一通の依頼が届きました。 送り主は、おじい様の急な閉店に驚き、胸を痛めていたお孫さんでした。
「大好きなおじいちゃんに、あのお店をもう一度プレゼントしたい」
3月のお誕生日。形を失ってしまうお店を、手のひらサイズのミニチュアにして、サプライズで届けたいという切なる願い。私はその想いをしっかりと受け止め、制作をスタートさせました。
二人三脚で描く、あの頃のストーリー
私の制作は、単に建物を縮小して作る「模型制作」ではありません。依頼主様と**「二人三脚」**で、そこにあった物語を掘り起こしていく作業です。
幸いにも建物がまだ残っていたため、依頼者様(お孫さん)には何度も足を運んでいただき、たくさんの写真を撮っていただきました。ネット上の記録を繋ぎ合わせ、さらにおじい様のこだわりや、ご家族の思い出を丁寧にお聞きしました。
「おじいちゃんは、絵が得意で、店頭のメニュー看板を自分で作られたのです」
そんな対話のひとつひとつが、作品に命を吹き込みます。私は作家として、その場所に流れていた豊かな時間のストーリーを描きながら、一石一木、心を込めて形にしていきました。
「店がなくなっても、ここに残り続ける」
お誕生日の数日前。無事に完成したミニチュアを神戸へと送り出しました。 輸送中の衝撃で壊れないか、お孫さんの想いは無事に届くか。宅配便を見送る背中に祈りを込める、一番緊張する瞬間です。
数日後。無事に到着したという連絡に胸をなでおろしていた私のもとに、お誕生日当日、さらに温かな報告が届きました。
プレゼントを受け取ったおじい様は、じっとその小さな店を見つめ、こうおっしゃったそうです。
「店が無くなっても、このミニチュアがあれば、思い出としてこれからも残り続ける」
形は変わっても、想いは風化しない
私がミニチュア作家を「天職」だと感じるのは、まさにこうした瞬間に立ち会えた時です。
私自身、かつて住み慣れた家や大切な家族を失った経験があります。だからこそ分かります。
「大切にしていたものが風化し、記憶からも消えていくこと」が、どれほど寂しいことか。
建物を壊さなければならない辛い気持ち。その痛みは、ミニチュアという形にして手元に残すことで、少しだけ救われるのだと信じています。
喫茶「ハロー」の看板の灯は、これから先も、おじい様とお孫さんのそばで、ずっと温かく灯り続けることでしょう。
その「想いの橋渡し」をさせていただけたこと。作家として、これ以上の幸せはありません。
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お客様の声: 祖父が約60年営んだ喫茶店を何か形に残したいと思い、
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大切な看板は、心を込めて手書で制作させて頂きました。

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こちらが、実際の店舗と、おじい様が手作りされたメニュー看板の写真です。

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完成したミニチュアの喫茶「ハロー」
25cm(横)×20cm(高さ)×12cm(奥行き)
参考価格: 30万円~













